脂肪吸引のメニューを科学する

脂肪吸引を考えたときに困ること。それはメニューが多すぎてよく分からないということではないでしょうか。ネットで少し調べただけでも、たくさんのメニューが出てきてますが、それらの違いとは果たして何で、自分に必要なものは何なのでしょうか。そして、価格差に見合った違いを感じられるものなのでしょうか。

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今回は、ネット上のメニューで見かけるいろいろなメニューについて詳しく説明したいと思います。皆さまが脂肪吸引の受けるときにどれを選んだらよいかの参考になれば嬉しいです。

2つの分類

いろいろなメニューを分類すると、大きく分けてレーザーなどの補助機器と吸引方法という2つに分けることができます。脂肪や皮膚の状況、初回施術・再施術の違いなどによって両方を併用する場合や、片方だけ使用する場合、何も用いない場合などがあります。

補助機器

【ベイザー・ウルトラZ】

良い脂肪吸引の代名詞的なイメージとして最初に思いつくものだと思います。ベイザー波とよばれる特殊な超音波を脂肪に照射することで、脂肪を溶かして吸引しやすくするというものです。機器自体が高額ですので、施術代金も高くなる傾向にありますが、個人的には適応のある症例にとっては良い機器だと感じています。ウルトラZは韓国の機器ですが、仕様書を見ると理論的にはベイザーと同じもののようです。

メリットは再施術などで脂肪が硬くなっている症例では簡単に脂肪を溶かすことができるので非常に有効であるということ、そして付属している吸引管(Vent X)が優れていて、短時間に出血量が少なく吸引することができること、などがあげられます。

デメリットは上にも書きましたが、施術代金が高額になるということ、ベイザー波の照射時間が短い場合には効果がほとんど出ないこと(手のひらサイズに5分程度の照射時間が必要だと言われていますので、太ももだと30分以上の照射時間が必要です。)、効果に差が出る症例が限られるということ、などがあげられます。

特に照射時間に関しては、施術時間を短縮するためにじゅうぶんな照射を行っていないクリニックもあるようなので注意が必要です。また、ベイザーが値段差に応じた効果の違いを生み出せるのは、脂肪に何らかの問題がある限られた症例だけなので、通常の症例であれば何も補助機器を使っていない脂肪吸引との仕上がりの差は医師の技術差による部分がほとんどになり、使用する機器による差はわずかです。

また、皮下脂肪の90%は除去可能ということが売りになっていますが、仮に物理的には可能だったとしても、そこまで多量の脂肪を取り去ってしまうと仕上がりやダウンタイム、合併症などの面で疑問が残ります。経験上は50〜60%くらいの脂肪を除去してあげることで、じゅうぶんな変化が見られますし、合併症のリスクを考えれば必要な脂肪は残してあげることも大切です。

【ボディジェット】

もともとはジェット水流で脂肪に水や局所麻酔薬を吹き付けながら吸引するという機器なのですが、吸引スピードが遅いという難点があり、最近では局所麻酔薬を注入するときにだけ使用して、吸引は通常の吸引管で行っている場合がほとんどです。硬い脂肪や痩せ型の人で吸引量が多く、皮膚に近いところまで吸引する必要がある場合などでは効果に差が出るようなのですが、柔らかい脂肪や脂肪量に少し余裕がある場合では大きく差が出ないというのが、私が使用した印象です。

【ボディタイト】

皮膚を機器で挟んで高周波(ラジオ波)を流すことで皮膚を引き締めます。脂肪吸引自体というよりは、施術後のたるみ対策として使われるものです。脂肪を柔らかくするためのボディジェットと相性が良く併用することが多かったのですが、効果の割に処置する時間が長くヤケドなどのトラブルが比較的多かたっため、最近ではあまり見かけなくなりました。

【レーザー系】

機器によって様々な名称がありますが、レーザーを皮膚の中から直接脂肪に照射することで、脂肪を溶かしたり皮膚を引き締めたりという効果を狙うものです。脂肪を溶かすにはかなりの熱量が必要となり現実的ではないこと、皮膚を引き締めるためには皮膚表面に近い部分にレーザーを照射しなければならず、施術後の皮膚知覚障害やヤケドなどのリスクがあるので注意が必要です。

【エルコニアレーザー(エルコーニアレーザー)】

レーザー系の中でもこれだけは少し他と違っていて、カラダの外からレーザーを照射することで脂肪を柔らかくすると言われています。外から皮膚に触れることもなくレーザーの照射を行うので全くダウンタイムがなく、照射量によっては脂肪を柔らかくするだけではなく液化してくれて減らすことも可能です。アメリカでは効果に関する論文も発表されていますが、実際に使用していた印象としてはそこまで効果を感じることはありませんでした。多くのクリニックでは入り口の格安治療的な位置づけとなっているようです。

吸引方法

【シリンジ法】

吸引器と呼ばれる器械を使用せずに、注射器に手で弱い陰圧をかけて脂肪を吸引するという方法です。吸引圧が弱い分だけ丁寧な施術となり綺麗に仕上がると言われていますが、吸引の穴付近では脂肪を吸い出すためのじゅうぶんな陰圧をかけることができずに仕上がりが甘くなること、弱い圧で長時間吸引することになるため腫れや内出血などのダウンタイムが強く出る可能性があることなどのデメリットも存在します。また、クリニックによっては吸引のための穴が通常の倍以上も必要となってしまい、傷がたくさん残ってしまうという問題もあるようですので注意が必要です。

吸引器という器械をただしく使いこなすことができれば、シリンジ法と同様の弱い吸引圧で脂肪吸引を行うことは可能です。脂肪吸引に慣れている医師は吸引器の電源を上手にon-offすることで無意識のうちに吸引圧を適切にコントロールしています。

【Vent X】

私がベイザー認定医として施術を行っていたとき、ベイザーに付属する吸引管のポテンシャルの高さに気づいてこのメニューを初めて作り上げました。ベイザー波は照射せずにVent X(ベントエックス)と呼ばれるベイザー付属の吸引管だけを利用したメニューです。脂肪の量に余裕がある方で、短時間に大量の脂肪吸引が必要になる場合などで活躍してくれました。

最近では類似の吸引管が複数開発され、それらの中にはVent Xの能力を上回るものも出てきたので、このメニューのメリットはほとんどなくなりました。キルシェクリニックでも大量の脂肪吸引時にはVent Xに類似している能力の高い吸引管を使用しています。

ここに載せているものだけではなく、他にもたくさんの補助機器や吸引方法があります。調べたい時には幾つかのクリニックのホームページを見比べてみると良いと思います。多くの場合にはメーカーのホームページや資料を参考にして作成していますので、複数のクリニックの説明が同じだった場合には、それを判断材料としても間違いではないと思われます。

気をつけなければならない方法

今までは効果があると言われている差別化メニューについて説明を行いましたが、以下に紹介するものは、全国ほぼ全てのクリニックで行われているもので、何かが違うというものではありません。宣伝広告としては上手だと思いますが、その宣伝に流されないよう注意してください。

【チュメセント法(チューメセント法)】

脂肪をいきなり吸引するのではなく、大量の水分と局所麻酔薬を脂肪に吸収させて脂肪をふやかせてから吸引するという方法です。昔はいきなり吸引していたので脂肪塞栓などの合併症が多かったのですが、チュメセント法を使用することで合併症が大幅に減少し、今は全国ほぼ全てのクリニックでチュメセント法での脂肪吸引が行われています。つまり、「チュメセント法による脂肪吸引=普通の脂肪吸引」ということになります。

【日本語に訳すと???な方法】

英語やフランス語の響きが素晴らしく良さそうな治療に見えても、日本語に訳してみると至って普通になってしまうメニューもたくさん存在しています。

オーダーメイド・テーラーメイド・オートクチュール・オンリーワンなど

→日本語訳「個別に脂肪吸引」

→1人1人体型も脂肪の量・硬さが違うので、常に個別でデザインと施術を行います。

ハンドメイド・ハンドクラフトなど

→日本語訳「手作り脂肪吸引」

→全ての施術は医師が手で行います。

クラフトマンシップ・アーティストなど

→日本語訳「職人の脂肪吸引」

→医師は技術職なので、脂肪吸引の施術はすべて職人技です。

ここにあげただけではなく色々なメニューがありますので、メニューの名前が良さそうに見えたとしても、「それが実際の施術結果にどう影響するのか」ということを考え、メニューを日本語に置き換えて理解をするように気をつけると良いと思います。

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通常の脂肪吸引ではダメなのか

以上のように、脂肪吸引という施術の中にはたくさんのメニューがあることがお分かりいただけたと思います。しかし、それらのメニューの中には本当に必要なのかどうなのか疑問を感じるものが少なくありません。脂肪吸引は医師の技術さえあれば、ある程度の仕上がりが期待できる施術です。適切な補助機器を追加することでさらに仕上がりが良くなることは間違いありませんが、それは全員が必要だというものでもありません。

たくさんのお客様を診察し、施術していて感じることは、何も補助器械を使用せずに施術を行っても、半分以上の方はしっかりと仕上がるということです。まずはシンプルな脂肪吸引ではダメなのかどうかをしっかりと検討し、補助機器を追加する場合には得られるメリットとデメリットの説明をしっかりと聞き、そこで本当に必要なのかどうかを検討して、費用対効果の面からも納得できるものだけを取り入れるようにしてください。

キルシェクリニックの考え方

東京都港区赤坂にあるキルシェクリニックでは、過去の実績から脂肪吸引のお客様が多く、全国からお越しいただいております。様々な補助器具や吸引法を経験した結果、シンプルな脂肪吸引を安価な費用で提供し、補助器具があった方が良い場合には適切な別のクリニックをご紹介して、当院で受けることのメリット・デメリットを説明してご判断いただくようにしています。吸引法に関しては、シリンジ法からVent Xに類似した吸引管まで幅広く準備しておりますので、ほぼ全てのケースで適応やご希望に応じて対処が可能です。

脂肪吸引は人生をプラスに変え、毎日に笑顔を増やすことができる素晴らしい施術ですが、大きな施術ですのでリスクも存在します。まずはいくつかのクリニックでカウンセリングを受けて、本当に今の自分に必要な施術なのか、自分の思い描いているイメージに近づくことができるかなどを検討してください。キルシェクリニックではカウンセリングを無料としており、無理に施術を勧めることもしませんので、お気軽にご相談いただければと思います。

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