脂肪吸引後の圧迫を科学する

脂肪吸引のカウンセリングや施術後の経過観察で、必ず出てくるのが「圧迫」についての話題です。皆さまもご存知の通り、脂肪吸引の仕上がりには圧迫がとても大切だと言われています。

しかし圧迫と言っても、脂肪吸引をした直後からテープで強く圧迫する場合もありますし、ガードルなどで簡単に圧迫するだけの場合もあります。圧迫解除は必ずクリニックまで来てもらう場合もあれば、自宅で自分で外してOKという場合もあります。圧迫期間に関しても数日と言うクリニックから半年と言うクリニックまで様々です。クリニックによっては、圧迫は意味がないので全く必要ないというところもあります。果たしてこれらの違いは何なのでしょうか。今回は脂肪吸引後の圧迫について色々と書いてみたいと思います。

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圧迫には2つの意味がある

脂肪吸引後の圧迫には、時期によって2つの目的があります。

止血をするための圧迫

脂肪吸引という施術は文字通りカラダの中から脂肪を吸い出してくる施術なので、必ず出血が伴います。脂肪吸引の施術直後というのは、まだ血が止まりきっていない状況ですので、圧迫をしなければ出血が続き、仕上がりにもカラダの回復にも悪い影響が出ます。特に広範囲の脂肪吸引では、どれだけ上手に素早く施術を行っても出血量が多くなる傾向にありますので、出血を最小限にするためには早めに圧迫して血を止める必要があります。予想外に出血が多かった場合や、施術前から貧血があり出血量をできるだけ少なくしなければいけない場合、また技術的に未熟な医師が施術を担当した場合などでは、特にその重要性が高まります。

美容クリニックでの脂肪吸引の多くは日帰り手術ですので、広範囲の脂肪吸引であっても施術の数時間後には自分で歩いて帰ることになります。そういった運動でも出血が増え、帰り道で体調に影響が出てくる可能性があることを頭に入れておかなければいけません。施術当日の帰りの移動は、タクシーや家族の迎え、近隣施設での宿泊など、できるだけ吸引部位に負担のかからない方法を選ぶことがベストです。

出血はしっかりと圧迫をして安静にしていれば数時間〜半日くらい落ち着きますので、最低でも施術後24時間は圧迫したままゆっくりと休むことが大切です。また、アルコールやシャワー、運動など、「血の巡りが良くなる=出血が増える」ことも控えましょう。止血をするための圧迫に関しては、医学的に絶対に必要な圧迫ですので、医師の指示に従うことが大切です。

回復を早め、仕上がりを良くするための圧迫

脂肪吸引後はむくみが強く出ますので、圧迫をしておかないとパンパンに腫れてしまい、日常生活が大変になってしまいます。腫れを最小限にし、生活をしやすくしてあげる目的の圧迫というものもあり、これは主に施術後数日から3ヶ月くらいの間で有効な圧迫です。

むくみが出てから圧迫をしても効果が半減してしまいます。施術後には圧迫をしない時間を最小限にして、できるだけむくみを強く出さないことが大切です。1日の中では、朝起きてからすぐのむくみが出ていない時に圧迫を開始し、夜寝る前(もしくはお風呂に入る前)まで圧迫をしてあげることで効果が最大になります。もちろん可能であれば夜寝ている時にも圧迫をしてあげてください。その方がさらに効果は高くなります。

また、脂肪吸引後の部位には繊維化という変化が起き、ヘチマたわしやスポンジのような組織が脂肪吸引した部位にできてきます。圧迫が弱くむくみが残っている状態で繊維化が起きてしまうと、その太さのままで固定されてしまって細さが出なくなる場合もあるので注意が必要です。逆に、むくみのない細い状態で繊維化が起きて完成すれば、圧迫を外しても太く戻ってしまうことはありません。繊維化が起きやすい時期の2週間目から2ヶ月くらいまでは、特にしっかりと圧迫をしてあげると良いでしょう。

むくみ自体は早い方では1ヶ月半くらいで落ち着いてきますが、医学的に厳密にみると3ヶ月くらいまではむくみが残っているようです。たるみ予防という観点から見ても、可能であれば3ヶ月くらいの圧迫をお勧めします。キルシェクリニックでは部位によっても異なりますが、最低3ヶ月、たるみが気になる方の場合では半年くらいの圧迫をお勧めしています。

圧迫の強さは強ければ強いほど良い?

圧迫の強さに関しては、一部の部位を除いて強く圧迫してあげることをお勧めします。理由としてはその方がむくみが起きづらくなり生活が楽になるからです。圧迫を強くした場合にはヒザ裏など関節の部分での皮膚のすり切れが痛みや傷ととなり問題になる場合がありますので、強く長期間圧迫を頑張る場合には工夫が必要です。

強さの目安としては

ホホ・アゴ:強い圧迫は必要ありませんが、圧迫方法に工夫が必要です。

二の腕:強めの圧迫で良いですが、圧迫があまりかかりませんのでほどほどでOK。

お腹:呼吸や食事に影響が出ない範囲で強く。

太もも:パンストで、できるだけ強く圧迫してあげてください。

ふくらはぎ:パンストで、できるだけ強く圧迫してあげてください。

となります。

これは多数の経験を基にしたキルシェクリニックでの圧迫指導の際の目安であり、論文や科学的データなど医学的な根拠というものはありません。別なクリニックでの施術を検討されている場合には主治医の指示に従っていただくことが大切です。

できるだけ強くという表現があいまいですが、具体的にはパンスト装着で10分くらいかかる程度の強さというのが目安になります。通常のサイズではそこまで強く圧迫はできませんので、ご自身の通常サイズよりも小さめのサイズを購入することで対応されている方が多く、小さいサイズのものを履くと破れやすくなりますので編みの細かくて丈夫な300〜500デニール程度のパンストを利用されていらっしゃる方が多いです。ただし、デニール数は丈夫さを表す数値ですので、圧迫の強さと比例するわけではないことには注意が必要です。サイズとデニールを上手に工夫することで、ご自身で一番圧迫がかかる最適な組み合わせを探してみてください。タイツなどで圧迫具の下に厚みを増すことも効果的で、その場合にはデニール数は気にしなくて問題ありません。また、脂肪吸引後の専用圧迫具なども販売していますので、そちらを利用されるのも一案だと思います。

強すぎる圧迫は血行不良や神経麻痺などの合併症も引き起こしますので、足先や手先がしびれる、痛みが強くて我慢できないなどの症状がある時には圧迫をゆるめたり、先端を切って広げてあげるなどの工夫をしてあげる必要があります。圧迫は大切な作業ですが、無理は禁物です。

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何ヶ月圧迫するのがベストなのか

これに関しては諸説ありますが、数日というものから半年というものまで様々です。論文などで科学的なデータが揃っているわけではありませんので、担当医の指示を守るようにすることが良いと思われます。

ただ、一つだけ言えることは、圧迫を長期間行ったとしてもデメリットは何もない、ということです。圧迫をするのは大変ですが、マイナスにならずプラスになる可能性があるのであれば半年程度は頑張ってみても良いかもしれませんね。

圧迫解除に要注意

圧迫しているというのは血液の流れを制限していることですので、圧迫を外すことで一気にその部分に血液が流れ込み、一時的に貧血のような症状が出る場合があります。施術後1週間くらい経過してからの圧迫でこのような症状が起きることは極めて稀ですが、それでも圧迫を解除する時にはベッドや床の上などの安定した場所で行うのが良いと思います。

また、施術直後に行った圧迫を翌日などに自宅で外すように指示される場合がありますが、これには特別の注意が必要です。気分不良を起こしてしまったり、時に意識を失ってしまうことがありますので、必ず別な方がそばについてもらっている環境下で外すようにしてください。特に広範囲の施術だった場合、出血量が多かった場合、長時間の施術だった場合には注意が必要です。外す前から気分不良がある、脈がドキドキしているなどの症状があったり、食事や水分がじゅうぶんにとれてなくて脱水が疑われる場合など、心配な場合にはクリニックで外してもらうようにしてください。キルシェクリニックでは安全のため、太ももの圧迫解除は必ずクリニックで行なっており、広範囲の施術や吸引量が多かった場合には、点滴をして血液量をある程度確保できる状態で圧迫解除を行っています。

キルシェクリニックができること

東京都港区赤坂にあるキルシェクリニックでは、脂肪吸引の施術だけではなく術前カウンセリングやアフターケアにも力を入れています。もちろん施術後のマッサージ指導にも力を入れており、基本的に全て院長が行っておりますので安心です。

圧迫具に関してはしっかりとした作りと快適な圧迫ができることで人気の株式会社エターナル様と連携することで、ほとんどの在庫を持っており、適切な圧迫具のアドバイスを行なっています。

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