最近では美容医療が身近なものになってきて、ひと昔前のような漠然とした治療への怪しいイメージや治療を受けることに対する後ろめたさも減り、多くの方が美容クリニックで治療を受けるようになってきました。
その中で最近大きな問題となってきているのが、「海外で美容医療を受けた患者さんが帰国後に困る」という状況です。あまり表には出てきていませんが、相当数のトラブルが発生していると予想されています。
今回は海外で美容医療を受ける際の、よく見かけるトラブルや注意点について書きたいと思います。海外での美容医療を検討されている方は参考にしてください。
目次
海外へ渡航して治療を受けている人の実際
では、どういった人たちが、どういった理由で海外へ渡航して美容医療を受けているのでしょうか。詳しく見てみましょう。
20代から40代の女性がメイン
これは日本で美容医療を受けている患者さんと同じです。ただ、日本国内での患者層よりも全体的に少し上にシフトしていて、学生さんで渡航する人は少なく、多くは収入面で不安の少ない社会人です。
ほとんどは韓国へ渡航
美容クリニックは日本国内にもたくさんあり、世界で行われている治療のほぼ全部と言っていいくらい、日本国内でも治療が可能です。それでも日本から海外へ渡航して治療を受けているのはなぜなのでしょうか。
その理由は美容大国である韓国の存在です。韓国では日本よりも前から美容医療が普及しており、その経験値は日本を上回ります。特に、骨を切る「輪郭矯正」「輪郭手術」「骨切り」と呼ばれるようなものや、目や鼻をダイナミックに変化をさせるような手術では、韓国人の骨格的特性から手術を受ける人が多く、その変化の大きさや治療成績の良さから人気があるようです。
何を求めて渡航するのか
目的は大きく2つに分かれます。治療費と仕上がりという点です。
韓国への渡航は渡航費が安く、格安チケットを利用すると2万円以下で往復できるタイミングもあるくらいです。韓国は美容大国と呼ばれるだけあって美容クリニックの数も多く、日本と比較して治療費が大幅に安いクリニックもたくさんあります。往復交通費と宿泊費などの現地滞在費を加えても、日本よりも格安で治療を受けることができるわけです。
また、上にも書いたように韓国の方が得意としている手術がいくつかありますので、そういった手術を検討している人たちも渡航して治療を受けています。ただ、韓国でも技術力に定評のあるクリニックの施術費用は、日本の標準的な美容クリニックと比較して安いというわけではなく、逆に日本よりも高いケースもあります。
渡航日数は数日から2週間が多い
渡航日数については幅があり、ちょっとしたプチ整形のレベルであれば1泊2日で行く人もいます。逆に骨を切るような大きな手術の場合には2週間くらいの滞在をする人もいます。
また、大きな施術を受ける人の中でも、手術が終わったら最短日程で帰国する人がいる一方で、抜糸まで韓国に滞在してから帰国する人もいます。
日本国内での環境(どのくらい休めるのか)という部分に大きく左右されているようです。これは日本で治療を受ける人と同じです。
最近ではヒアルロン酸やボトックスなどの美容皮膚科処置も増加
数年くらい前までは渡航というと大きな施術がメインでしたが、最近は美容皮膚科的な処置も増えてきています。日本で使用されているヒアルロン酸やボトックスのかなりの割合は韓国から輸入されていますので、送料などの手数料がかからない分だけ、韓国で治療を受けた方が安くなる場合が多いです。
医療目的て渡航する人だけではなく、観光のついでに最終日にちょっとプチ整形、という人も増えてきています。
どのようなトラブルが発生しているか
ここでは実際に海外渡航して美容医療を受けた人が、どのようなトラブルに巻き込まれているのかを見ていきたいと思います。
期待した変化と違う
日本人と韓国人では、美に対する意識や感覚が違いますし、その時の国内での流行というものも存在します。一般的には、韓国人の方がダイナミック(派手)な変化を好み、ダウンタイムを気にしない傾向にあります。
そのあたりのすり合わせをしっかりと行わないと、自分がイメージしていたものや期待していたものと違った結果になってしまう場合があります。これは日本のクリニックでも同じですが、医師とのコミュニケーションが通訳を介さないといけない韓国での治療の方が、より難しいと言えるでしょう。また、通訳を介している場合には日本人同士の会話と比べて、通訳が話す分だけ倍の時間が必要になります。カウンセリング時間は日本と同じくらいでも、内容としてはいつもの半分しかなかったということを知っておかなければいけません。
腫れや内出血、痛みなどのダウンタイムについては、最終的には必ず回復していきますので心配はいらないのですが、予想していたよりもダウンタイムが大きくて予定の日程では仕事に行くことができないというトラブルも多いようです。特に大きな施術の場合には、日本でイメージしているようなダウンタイムとは大きく異なる場合がありますので注意が必要です。
何か問題があっても日本国内でフォローしてもらえない
美容医療、とくに大きな施術においては、ある程度のリスクもつきものです。何1つ心配なく経過するケースの方が少ないと言っても良いでしょう。そういった経過の中で不安を解決できる方法は医師の経過観察のみです。クリニック側が経過観察を断るということは無いと思われますが、診察を受けるためには手術を受けたクリニックに行く必要があります。日本国内でも遠方だと受診しづらいものですが、それが海外であればなおさらです。
医師の感覚からすると、どのクリニックでどのような治療を行ってきたのかがわからない患者さんを、手術後だけ診察することは大きなストレスです。手術内容を実際に見ていないと、何が起きているのかを把握することが難しいですし、訴訟などの責任問題に巻き込まれた場合には手術の執刀医との責任範囲が曖昧(あいまい)になる傾向にあるからです。
現実問題として、術後だけをケアしてくれるクリニックは、日本国内ではほとんど見つからないと言っても過言ではありません。感染や出血などの緊急性の高いトラブルが発生した場合であってもそれは同様で、最終的には救急車で救急病院に搬送されるというケースが多いようです。
増加する医療難民
上に書いた通り、日本国内では術後だけをケアしてくれるクリニックは多くありません。ですので、抜糸前に帰国した場合には抜糸してくれるクリニックを探すだけでも大変です。もし見つかったとしても格安の治療費で抜糸をしてくれるクリニックは皆無のはずで、抜糸だけでも3万円から5万円くらいの治療費を求められるのが普通です。
クリニックの運営は施術費用に含まれている技術料が主な収入であり、アフターケアはサービスとして行っているからです。医療は商売ではない一方で、ボランティアでもありませんので、施術を受けていない患者さんにリスクだけを背負ってサービスだけを格安で提供することはできないわけです。もちろん保険証を使用した保険医療の利用はできません。
治療費の高い安いはともかく、地元で治療を受けられるクリニックが見つかる人はまだ恵まれています。地元では見つからずに大都市まで2時間くらいかけて抜糸やその後のトラブル治療を続けている患者さんも少なくありません。
このように、海外で治療を受けてきた人が、日本国内で術後のケアを受けられない「医療難民」が増加しています。
海外で美容医療を受ける際の注意点
海外で美容医療を受けることは、費用面や仕上がり面で魅力的に見える場合があるのは事実です。ですが、渡航して医療を受けるということは、ある程度のリスクがあるということも理解しておかなければいけません。事前に注意することで回避できるトラブルは避けられるように対策をしておきましょう。
必ず医療機関を通すこと
渡航して治療を受ける場合の一番大きな問題点は、「帰国してからのトラブル対応」という点です。医療には絶対ということはありませんので、いざという時のことを想定して準備をしておくことは、とても大切です。トラブルが発生した場合には、内容によっては1分1秒を争う場合もあるわけです。そういった緊急時にクリニック探しからはじめていては、手遅れになる可能性も考えられます。
一番ベストな方法は、「日本のクリニックに海外の医療機関を紹介してもらうこと」です。紹介してもらう時に、帰国後のケアを日本のクリニックでお願いしておきましょう。そうすることで、安心して治療を受けて帰国することができます。
渡航しての美容医療では「エージェント」と呼ばれる仲介会社が斡旋している場合もあります。医療機関ではない一般の仲介会社を利用した場合には、トラブル対応が手薄になっている場合も多いですので、必ず緊急時の対応について確認しておく必要があります。
看護師によるケアを提案してくる仲介会社もあるようですが、看護師が法律的に単独での行動を認められているのは「療養上の世話」のみですので、経過観察や状況が変化した時の対応については法律違反となり認められていません。一般の仲介会社を通して治療を申し込む場合には、最低でも提携医療機関があり、その医療機関で術後ケアまで受けられることが必要です。緊急時の対応以外でも気軽に相談できれば、なおベストです。
通訳や現地滞在などのサポートが大切
美容医療は美的センスや希望のイメージなど、すり合わせをしておくことが大切です。日本語でコミュニケーションを取れないことは不利ですので、有能な通訳の存在はとても心強い味方となってくれるはずです。通訳の能力に不安を感じた場合には、施術を見送ってクリニックを変える勇気も、ときに必要でしょう。
カウンセリングについては上にも書いた通り、「日本語同士で相談しているときの半分の情報量しか交換できていない」ということを意識して、日本でのカウンセリングよりもより時間をかけてコミュニケーションをとることが大切です。それができない場合には、日本人医師やカウンセラーの人と事前に打ち合わせを行うことで、簡潔に希望を伝えられるように準備しておくのも良い方法です。
また、渡航先の宿泊などの現地でのサポートがどの程度あるのかも大切なポイントです。理想は現地クリニックが宿泊などまですべてサポートしてくれることですが、そういった部分までサービスを提供しているクリニックが少ないのも事実です。現地で何か困った時に、どこまで対応してくれるのかどうかは確認しておく必要があるでしょう。
現地の言語の能力に自信がない場合には、自分だけで手配をすることは危険です。
国内では対応できない治療なのかを調べる
昨今の情報社会、国際化社会の中では、技術・知識などについて先進国同士で大きな差はなくなってきています。もちろん蓄積した経験や技術などには差があるとしても、比較的難易度の高くない治療の場合、そこまでの差が出ない場合も多いわけです。ヒアルロン酸やボトックスなどの美容皮膚科的な治療であればなおさらです。日本国内で受けられる手術の場合、国内で受けるという選択肢も検討に入れておくと良いでしょう。
国内の美容クリニックでは得られないダイナミックな変化が欲しい、国内では治療費が高くて手が出ないなど、何となく海外で治療を受けるのではなく、明確な理由をもって海外渡航に臨むようにしましょう。
まとめ
渡航医療と呼ばれる、海外での美容医療についての現状と問題点、そして注意すべきポイントについて書いてきました。大切なことは、「安易に海外での手術に手を出さないこと」「日本国内での万が一の対応を考えておくこと」の2つです。この2つをクリアしておけば、海外での美容治療が満足いくものになる可能性はグッと高くなることでしょう。
東京赤坂のキルシェクリニックでは、韓国No.1美容外科のID美容外科を正式に提携しており、輪郭矯正手術や鼻の手術についての患者紹介をしています。ID美容外科側と協議をして、現地(ソウル)での宿泊費をID美容外科提携のホテルで最大15泊まで無料にできたり、抜糸前の早期帰国の場合でも費用負担なく当院で抜糸や腫れ軽減ケアなどの治療が受けられたりなどのメリットが提供できるようになりました。もちろん韓国での空港ー病院、病院ーホテルの送迎も通訳も無料でつきますので安心です。
現地での担当医カウンセリング前に、当院での日本人医師とのカウンセリングも可能ですので、海外での渡航医療をお考えの方はお気軽に相談してみてください。