脂肪吸引はボディラインの大きな変化が短期間で手に入るため、リスクのある施術ではあるのですが人気のある施術でもあります。その一方で、施術の結果に満足いかずに再施術を検討する方が多い施術でもあるので注意が必要です。
脂肪吸引を考えた時に、まず決めなければいけない大切なことは、「どの医師で施術を受けるのか」ということです。安易な医師選びは成功の確率を下げてしまいますし、後々の大きなトラブルに発展する可能性もあります。そんな医師選びのに参考になるのが、カウンセリングでの印象と信頼度、そして症例写真だと思います。
美容外科の施術では「通常価格」と「モニター価格」に分かれている場合が多く、モニター価格は施術前後の写真撮影を行ってそれをネットなどで使用することを許可したり、アンケートを書いたりと、クリニックに協力をすることで通常価格よりも割安で施術を受けることができます。多くの場合、症例写真はそういったモニター価格で受けた患者さんの写真を使用しています。
今回は、脂肪吸引の症例写真で確認するべき5つのチェックポイントについて書きたいと思います。脂肪吸引を検討されている方は、医師選びの参考にしてみてください。
目次
全体が写っているか
症例写真を見ていると、太もも全体の施術なのに片側の足だけがアップになっていたり、足の付け根から膝までの施術なのに太ももの付け根だけのアップになっていたりなど、冷静に考えると不思議な写真を載せている場合があります。これはなぜなのでしょうか?
確かに隙間ができて細くなっていますが、果たして逆側との左右差や、ふくらはぎまで含めた足全体としてのバランスはどうなのでしょうか・・・?
これでは医師の技術を評価する症例写真としては不十分です。
多くの場合は、左右差が目立っているケース
太ももやふくらはぎなど、左右があるものについては、左右差という問題が必ずついて回ります。もちろんヒトには生まれつきの左右差が必ずあり、施術前から左右差があるのが自然なことなのですが、施術後にも左右差が目立つ場合があります。
骨格などが原因で仕方のない左右差が残る場合も少なくありませんが、明らかに技術差によって左右差が目立ってしまっているケースもあります。そういった場合には片側だけ切り取る、部分的に切り取る、という形で何とか症例写真として生かそうと工夫をしている場合があります。特に症例が集まっておらず、少ない症例写真で何とかしようとしているクリニックに、その傾向は強く出るようです。
二の腕の症例写真だけは例外
二の腕だけは、皆さんが気にされる場合の多い二の腕の付け根あたりの変化感を見ていただくためには、左右の側面から写真を撮影しなければいけないので、どうしても片側だけの写真になってしまいます。
このようなケースは、部分的に切りとっているとは言えず、例外だといえるでしょう。
施術部位全体が分かる写真だけを信用すること
部分的に切り取って掲載している症例写真が、仮に(症例写真としてではなく)芸術的なデザインとしての美しさを追求していたとしても、症例写真には芸術性は必要ありません。施術前後の正しい比較ができる症例写真を提供している医師を選ぶようにしましょう。
この写真のように「全体」「左右とも」を見ることではじめて、症例写真としての意味があり、医師の評価ができるようになります。部分的に切り取ってある写真がどれだけ素晴らしいものであったとしても、評価することはできません。
症例写真で常に同じような変化が出ているか
症例写真が自分好みのデザインか
たくさんの医師の症例写真を見た方なら感じている部分があるかと思いますが、症例写真の結果がいつも同じようなデザインに仕上がっている医師と、症例ごとにバラバラの結果になっている医師がいます。これはどちらの方が良い医師なのでしょうか?
また、デザインが好みの医師と、そうではない医師がいるのは何ででしょうか?
医師による個性が出やすい施術
脂肪吸引は美容外科施術の中で最も医師によっての個人差が出やすい施術だと言っても良いくらい、差が大きく出る施術です。差は取る量だけではなく、デザインにもあらわれており、医師によって仕上がるデザインが大きく異なるのが脂肪吸引の特徴です。これは、技術的な部分にもよるものもあるのですが、それ以外のデザインセンスにも大きく左右されるもので、どれが医学的に正解なのか、という答えはありません。自分が気に入ったデザインを正解と考えて良いでしょう。
ただし、これだけ医師による差があるので、ある気に入った症例写真を持って、別な先生に同じようなデザインで再現して欲しいとお願いしても、なかなか難しいのが脂肪吸引の難しいところです。医師の人柄で選ぶのか、症例写真のイメージで選ぶのか、両方が一致すれば良いのですが、それぞれに希望に近い別なものがある場合、どちらかを決める必要があります。
安定した結果を出せていることが大切
技術力があり、経験を積んでいる医師ほど、いつも同じようなデザインに仕上がります。患者さんの足の元々の形にも多少は左右されますが、多くの場合には医師の「クセ」の方が結果に大きな影響を与えますので、自分が気に入ったデザインの症例写真をたくさん載せている先生を選んだ方が、満足度の高い施術が受けられる可能性が高くなります。結果が安定していない医師を選ぶのは控えた方が良いでしょう。
症例写真の数がたくさんあるか
症例写真を見ていると、とても素晴らしい症例写真が1枚だけ載っている医師がいます。また、1枚だけはとても素晴らしいけれど、残りの写真はそれほどでもないという医師もいます。こういった場合はどのように判断したら良いのでしょうか?
奇跡の1枚
これはとても大切です。美容外科医の世界には「奇跡の1枚」という言葉があります。たくさん撮った症例写真の中で、ただ1枚だけ奇跡的に素晴らしい写真が撮れた、というものです。これは裏を返すと、たった1枚の症例写真の素晴らしさで患者さんが集まってくる、ということでもあります。
しかし、冷静に考えれば1枚だけの写真で、その医師の技術力を評価することはできません。1枚だけ奇跡的に素晴らしい写真があり、残りはいまいちの写真だったりほとんど写真がなかった場合、自分の施術で奇跡が起きない限りは、そのような素晴らしい結果にはならない、ということなのです。
奇跡の1枚に惑わされることなく、たくさんの写真で安定した結果が出ている医師を選びましょう。また、ネット上の症例写真が少ない場合には、カウンセリングの時に必ず他の症例写真を見せてもらうようにしましょう。院内限定使用のモニター写真というのもたくさんあるはずです。
最低でも同じ症例の写真を10枚は見ましょう
1人の医師で10枚の症例写真を見るというと、とても多いような印象です。
では、毎月1件だけ脂肪吸引を行っている医師に施術を依頼する、と聞いたらどう感じるでしょうか?
多くの場合、それでは症例数が少なすぎると感じるのではないでしょうか。毎月1件の症例写真があったとして、1年間の経験で12件の症例写真になります。毎週1件の症例写真があれば、1年間で約50件の症例写真になります。モニターを希望されない方が30%いたとしても、35件の症例写真が1年間でストックできるわけです。数年の経験がある医師ならば、簡単に100例以上の症例写真が貯められるでしょう。
そして、数多くの良い症例写真を持っているということは、安定した技術が出せているという証でもあります。10例の脂肪吸引の症例写真を見るということは、この数年間の医師の技術を評価する、ということに近いのです。
同じ姿勢で撮影しているか
最近では画像加工の技術が上がっていて、一見すると全くわからないくらいまでになっていますが、それには高度な知識や高額な費用が必要です。しかし、加工以外にも画像を良く見せる方法はいくつもあり、その中で一番簡単にできることが「撮影条件を変える」というものです。
さっそく画像を見てみましょう。
脚の付け根の外側の張り出しが小さくなり、太ももの間にもすきまができて細くなっている!と思ったけれど・・・
実はただ、足の向きと位置を動かしただけ、ということもあるわけです。ちなみに、これは症例写真ではなく、モデルさんにお願いして足の位置だけを動かして撮影していますので、脂肪吸引や他の痩身治療などは一切行っていません。単につま先の向きを少し内股にして、少し足を広げただけで、これだけ大きな変化を出すことも可能なのです。太ももの脂肪吸引でも、症例写真を見るときには足全体を見る必要があるのは、このためです。正しい判断をできる材料が無ければ、症例写真を正しく判断できません。
このように、画像のマジックと呼ばれるものが存在するのが症例写真の難しいところです。こういったマジックに騙されないためには、遠くから全体を写した写真を見ることや、同じ姿勢で撮影しているかなど、細かい部分までしっかりと比較することが大切ですね。
まとめ
脂肪吸引を受けたいと思った時には、医師選びがとても大切です。相性の合う医師を選ぶことで、施術が成功し満足いくものになる確率はグッと上がります。そのためには、複数のクリニックでカウンセリングを受け、症例写真をたくさん見ることが大切です。
症例写真を見る時には、全体が写っていて左右差まで評価できるような適切な写真だけを判断の材料にするようにしましょう。また、奇跡の1枚に惑わされることなく、たくさんの症例写真で総合的に判断するようにしましょう。
くれぐれもネットの口コミ情報や体験ブログという誰が書いたかも分からないものだけで、クリニックや医師を決めるようなことはしないようにしてください。口コミや体験ブログのある程度の割合は、クリニックやクリニックが依頼した業者が書いているサクラ(ステルスマーケティング・ステマ)が含まれています。ひどいクリニックでは、半分以上がステマでそれ以外にも体験記と称した宣伝広告などを大量に行っているクリニックもあります。ネットの情報だけをあてにせず、実際に医師と話をして、自分の目で症例写真を見ることが大切です。